統合失調症

統合失調症は当院が最も専門とする疾患群です。統合失調症は以前は「精神分裂病」と言う名称でしたが、2002年に統合失調症と言う病名に変わりました。(ちなみに私が精神科医になりたてのときは「精神分裂病」の時代でした。)
統合失調症は実は非常にありふれた病気で、100人に1人程度の割合で発症すると言われております。この疾患の難しいところ、そして非常に興味深いところとしては経過や病状が人によって大きく異なると言うことです。
10代20代の頃にいわゆる幻聴や妄想が現れなかなかその症状と付き合うことができず引きこもってしまい社会性が低下してしまうと言うのが典型的な病気の経過ではあります。このような若年発症の場合は治療を適切に行わないことによって不適切な経過をたどることが多いので悩ましいところです。
その一方で半数以上の方が軽快していることも事実です。中に一時的な治療終結に至ることも稀ではありません(注;これらは当初より別の疾患出会った可能性もあります)。もちろん人間の心は良い時もあれば悪い時もありますが、比較的中長期の長い経過観察によって安定した経過をたどる方も少なくはありません。
経過が長くなった場合は福祉的なフォロー、社会資源の活用なども非常に重要です。当院は統合失調症の方を支援する体制として、経験を有する精神保健福祉士、多くの精神保健指定医/精神科専門医がおりますので、どうぞお気軽にご相談していただくことが大事かと思います。
大切な事は本人のみならずご家族もこの病気をよく知り、偏ることなく、そして気負いすることなく付き合っていくことが実は近道です。決して明るい側面ばかりではなく大変な部分もあろうかと思います。長い間病気と付き合っていかねばならない点もあるのも事実です。治療を中断するがあまりに悪化したケースも経験しております。

 

これまでの経験を踏まえ、まだお会いしていない患者様にさらなる良質な治療が提供できるよう日々研鑽に努めております。

統合失調症とは

幻覚統合失調症は、幻覚や妄想、意欲低下や感情表現の平板化など、さまざまな症状を起こす疾患です。思春期など若い時期の発症が多い傾向があり、高齢になってからの発症は少ないとされています。急激に強い症状を起こすこともありますが、ゆっくり進行するケースも存在します。また、幻覚や妄想はご本人にとっては現実味があって病気であることを自覚しにくい特徴があります。100人に1人程度がかかるとされているため、珍しい病気というわけではありません。

病状の安定や再発を防止する治療をしっかり続けることが重要です。

統合失調症の原因


下記のようないくつかの仮説がありますが、はっきりとした原因はわかっていません。

脳の神経伝達物質であるドーパミンの関与

脳をはじめとする神経系の機能が障害を起こすと精神状態を正常に保つことができなくなります。神経細胞はドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質によって情報を伝達しています。ドーパミンを活性化させる薬剤によって統合失調症に似た幻覚・妄想といった症状を起こすため、統合失調症でも過剰なドーパミンによって症状が起きているのではと考えられています。なお、ドーパミンは過度なストレスや不安で過剰に働くことがあります。

多くの要因が重なって発症

遺伝的な要因、脳のトラブル・性格といった脆弱性のある要因を持っていて、そこにストレスや環境の変化などが重なって発症すると考えられています。これは、ストレス・脆弱性仮説と呼ばれます。

その他

胎児期や出産の際の低酸素症などが関与しているなど、さまざまな仮説がありますが現段階において原因に関しては不明な点が多いです。

統合失調症のタイプ


統合失調症は、症状の現れ方などが多彩で治療効果の出方も千差万別ですが、発症の時期や症状、予後などにより、妄想型・破瓜(はか)型・緊張型の3つのタイプに大きく分けて考えられています。

妄想型

発病は18歳前後からもありますが、30歳前後が多くなっています。主な症状は幻覚や妄想で、統合失調症としては症状が最も軽いとされています。他の症状がほとんどないことが多いのですが、生活行動に問題がある場合もあります。

破瓜型(はか型)

発症が最も多いタイプで、ほとんどの場合は10~20歳代に発病します。ゆっくり進行して、症状が長く続きやすい傾向があります。感情・意欲・思考に障害が現れやすく、生活の変化や生活の乱れ、支離滅裂な会話・行動、感情の平板化などを起こしやすいとされています。

緊張型

20歳前後の発症が多く、強い症状を現すことが特徴です。幻覚や妄想、不眠、激しい興奮と周囲への反応が極端に鈍くなる昏迷状態など両極端な症状を起こすことも多くなっています。同じ動作の繰り返し、相手と同じ動作をしようとするなどの緊張症状を起こすこともあります。

統合失調症の症状


症状統合失調症では、主に「陽性症状」「陰性症状」「認知障害」という症状が現れます。陽性症状は幻覚・妄想などがあります。陰性症状は消耗期・回復期に起こる慢性の症状で、認知障害は知覚・記憶・注意・実行などの脳機能における障害です。幻覚(幻聴)は実際にはない物をあるように感じることで、妄想は誤ったことを固く信じて訂正を受け入れない状態です。
下記のような症状に気付いたら心療内科の受診をおすすめします。

陽性症状

  • ひとりごと・ひとり笑いが多い
  • 監視・盗聴されていると感じる
  • 責められている・尾行されている・騙されていると感じる
  • 他人から危害を加えられていると感じる
  • 命令する声が聞こえてくると感じる
  • 自分の考えが他人に聞こえている・考えを読まれていると感じる
  • 悪口を言われていると感じる
  • 本や新聞に自分のことが書かれていると信じ込む
  • 幻聴など、実際にない物を感じる
  • 話題があちこちに飛ぶ・支離滅裂になる
  • 子どもじみた行動をする
  • 身なりに構わなくなる・衛生に気を使わなくなる
  • 極度に興奮する

など

陰性症状

  • 自宅にひきこもりがちになる
  • 表情が乏しくなる
  • アイコンタクトが減る
  • 口数が少なくなる
  • 質問してもそっけない答えしか返ってこない
  • 以前は夢中になったことにも興味を示さない
  • 人間関係に無関心になる
  • 感情の変化が乏しい
  • 周囲への興味や関心がなくなる
  • 部屋が散らかる・片付かない
  • 社会性の喪失
など

 

認知障害

  • 本を最後まで読まなくなる
  • 指示通りに物事を進められない
  • 話の筋を理解できない
  • 単純作業をやり終えることができない
  • 気持ちや考えを集中することができない
など

 

統合失調症の症状や治療の経過


統合失調症は、前兆・急性期・休息期・回復期・安定期と、経過を分けて捉えることができます。経過の推移を知っておくことで、変化に対応しやすくなります。

前兆期

気分障害やうつ病のような症状が前兆として現れはじめる時期です。焦り、不安、感覚過敏、集中力の欠如、意欲低下、不眠、食欲不振、頭痛などの症状です。統合失調症という診断ができないことも多い段階ですが、こうした症状が現れた時点での受診により、高い治療効果が期待できます。

急性期

統合失調症特有の症状が現れはじめます。前兆期にあった不安や緊張、感覚過敏といった症状が激しくなることもあります。幻覚や妄想という症状がある場合、周囲とうまくいかなくなるなど日常生活への支障も大きくなります。

休息期

幻覚や妄想などの陽性症状が治まって、感情鈍麻や意欲低下などの陰性症状が起こるようになります。ただし、気持ちが不安定で、ちょっとしたことで陽性反応を起こして急性期に戻ってしまうこともよくあります。長期的に回復へ向かうことを考えて、焦らないことが重要です。

回復期

治療効果が現れはじめて、回復・安定に向かいます。症状が落ち着いたことで今後の不安や焦りなどに注意が向きやすいため、注意が必要です。

安定期

状態が安定してくる時期です。病気になる前の状態に戻ることもありますが、急性期症状が少し残るケースや、回復期の陰性症状がある程度続くケースもあります。
そして、安定はしていますが、再度前兆期がはじまることもあります。そうさせないためにも、しっかりとコントロールを続ける必要があります。治療開始から適切な薬物療法によって安定まで導いたら、それ以降は必要な薬を絞って処方することで再発率低下につながります。

統合失調症の治療


薬物療法と心理療法を用いて治療を行います。心理療法では、対話を通じて精神的にバックアップする支持療法やリハビリテーションなどを行います。

薬物療法

薬物療法症状を抑えるための薬を服用して、症状が治まってきたら薬を段階的に減らします。安定期に入っても必要な薬の処方を続けることで再発率の低下も期待できます。重要なのは、症状をなくす・再発を防ぐといった必要に応じて過不足なく薬を処方することだと当院では考えています。これによってトータルで服用する薬の量も減らせます。

薬物療法で主に使われるのは、症状を抑える抗精神病薬です。症状や状態に合わせて、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬などが補助的に使われることがあります。

心理療法

統合失調症では、支持療法が有効とされています。これは、医師やカウンセラーに患者様が不安や心配なことを具体的に伝え、一緒に解決法を考えるという対話による療法です。精神的なバックアップを受けることで、お悩みの解決につながる糸口を見つけやすくします。また、治療や再発に関する不安なども、何度も話題にして対応策を具体的に確かめることで解消しやすくなって気持ちの安定にもつながります。

再発予防のために

統合失調症は再発しやすい傾向があります。症状が改善してからも服薬を続けないと、数年後には60~80%に再発が起こるとされています。症状改善後も抗精神病薬の服用を続けることで再発率が下がることもわかっています。再発予防のための処方は薬剤の量が少なくても十分な効果を得られやすいため、改善後に服薬を中止して再発を繰り返すよりもトータルの薬剤服薬量は少なくなります。もちろん、再発によるストレスもないため地道に治療を続けることが重要だと当院では考えています。
統合失調症では、調子がよくなると自己判断で服薬をやめてしまって再発を繰り返すケースが少なくありません。適切に医師と相談しながら減薬を図ることは十二分に可能です。減薬や薬の中止は医師と相談して行うようにしましょう。

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